集中治療部の概要
革新への挑戦
日本において、そして世界的にも急速な社会変容の時代を迎えています。気候変動や新興感染症、人工知能(AGI)革命、戦争危機、インフレーション経済、人口減少社会など、その変化はパンデミック後に急速に加速度を増し、あらゆる分野を巻き込んでおり、医学界にも大きな波が押し寄せています。
今こそ一人ひとりの変革が問われるときです。自治医科大学 集中治療部は、30年以上前、日本の集中治療の黎明期から、集中治療医が専属するICU管理(closed-ICU system)を構築し、挑戦を続けてきました。よりよい未来を形成するためには、刻々と変化する環境に適応し、多様な価値観、批判的思考、創造性や、なによりその意志をもった一人が必要です。
自治医大 集中治療部は、これからも個々の力の集結し、集中治療の発展を目指して革新に挑んでいきます。
多彩かつ困難な症例に立ち向う
スキルと経験
我々は、コロナ禍前で年間およそ1,000例(延べ入室者数4,500例)を超える患者を収容し、重篤な内科疾患から脳死移植まで、多種多様な重症患者の治療を行っています。
大学病院として難病や比較的稀な疾患の患者に対して先端・先進医療を提供しているだけではなく、地域の基幹病院としての役割も果たし、common diseaseから稀少疾患まで幅広い患者が集まるのが当院の特徴です。その中央施設部門である集中治療部は、general ICUとして内科・外科の垣根を超えた重症患者管理を行っているため、幅広い疾患を豊富に経験することができます。
また当施設はあらゆる臨床情報を集約化し、種々の人工呼吸器、様々なモニタリングデバイス、体外循環等を駆使した管理を実践しており、重症患者を「診る力」を養うことが可能です。
当施設の臨床での取り組み
- 生体情報、医療機器パラメータ、臨床データの一元化管理
- ASV、PAV、NAVAなど様々なモード、種々の呼吸器を用いた人工呼吸管理
- 人工呼吸のオートメーション
- 経肺圧(食道内圧)を用いた肺メカニクスの評価
- FloTracシステム、LiDCO、esCCO等を用いた循環管理
- バイオマーカを用いた血管内皮・凝固系の動態評価
- CHDF、IHD、ECMO、補助循環等を駆使した臓器支持療法
知的好奇心の探求
集中治療医として臨床の専門性を高めた先に「研究」が存在します。集中治療医学は全身すべての臓器を扱う分野であり、我々の前には解明すべき未知の領域が拡がっています。
ベッドサイドで日々湧き上がる疑問、カンファレンスで交わされる活発な議論、教科書や定説を疑い、鵜呑みにしない姿勢からテーマが生まれます。自分の知的興味がうずく分野を掘り下げ、新しい知見を世界に発信することは、臨床とは一味違うやりがいと達成感を生みだす源泉です。当施設では、循環、呼吸、脳症、敗血症、血管内皮障害を主なテーマとして、以下のような研究を行っています。
主な研究テーマ
- AIを用いた臓器障害の予測機構の開発
- 4dimension-CTを用いた肺画像解析
- EITによる換気動態の評価
- 動脈圧波形分析による血行動態の評価
- 敗血症における凝固・血管内皮障害の解析
- せん妄の早期検知と予測機構の開発
- 集中治療後症候群の疫学的調査
最後の砦「Hospital in hospital」としての矜持
ICUは、我々集中治療医が戦う最前線であると同時に、院内はもちろん管轄する医療圏において最も重篤な患者が辿りつく最後の砦です。院内各診療科からも厚い信任を得ており、Hospital in hospitalとしての重責を担っています。
目の前にある命を救うことに理由は必要ありません。重症患者のスペシャリストとして、自らのアートとサイエンスを駆使して生命の危機にある患者を救う、それが我々の最初の、そして最大のゴールです。
診療体制
集中治療に専念するフィールド
自治医科大学 集中治療部は、内科系・外科系を問わず、院内のあらゆる重症患者に対して集中的・集学的治療を行う中央部門施設です。救急部や麻酔科の一部としてではなく、独立した診療ユニットとして、専属する集中治療医が運営しています。
重症患者の治療に24時間体制で専念できる環境だからこそ得られる深い知識と経験によって、自らの成長が実感できるフィールドを形成しています。
高い水準の集中治療
アカデミック機関として、ハイレベルな集中治療を提供することが我々の使命です。それは単にエビデンスやガイドラインをなぞるだけの診療ではなく、特定の治療や医療機器を偏重する医療でもありません。「Listen to the Patient」、患者一人ひとりが発する徴候に耳を傾け、病態を深く洞察することが基本です。その上で最新の研究データが示すエセンスを理解し、組み入れることで高い水準の医療が実現できます。さらに内科、救急、麻酔など多様なバックグラウンドをもつ集中治療医が、それぞれの強みを生かして多角的に介入し、一人ひとりの患者に最適な治療を提供することが当施設の特徴です。
プロフェッショナルが集うチーム医療
精神・認知・身体機能にまで影響する複雑な病態を抱える重症患者に、よりよい予後をもたらすためには、高いレベルの専門的知識と能力をもったプロフェッショナルが、協力してゴールを目指すことが大切です。さらに共通の使命のもと、互いへの支援や尊重を生み出す信頼関係が構築されたチームで働くことは、やりがいや達成感に繋がります。
当施設は集中治療医が核となり、関連各科の医師、ICU看護師やパラメディカル(薬剤師、臨床工学技士、理学療法士)と密接に情報を共有し、役割や責任を明確にすることで効率かつ効果的なチーム医療の提供を実現しています。
施設認定、専門医・専門看護師
- 日本専門医機構認定集中治療科専門研修施設
- 日本呼吸療法医学会認定専門医研修施設
- 日本集中治療医学会認定専門医
- 日本呼吸療法医学会認定専門医
- 急性・重症患者看護専門看護師
- 集中ケア認定看護師
診療実績
部門統計
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2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | ||
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入室患者数 (死亡例数) |
719(26)人 | 691(24)人 | 824(14)人 | 1,007(27)人 | 1,043(13)人 | |
年齢 | 66(53-74)歳 | 66歳 | 61.9歳 | 61.5歳 | 61.5歳 | |
重症度 | APACHE II スコア |
16(12-21) | 15.8(2-51) | 14.3(2-49) | 16.7(0-56) | 15.3(0-47) |
SOFA スコア |
7(4-10) | 5.8(0-20) | 4.5(0-19) | ー | ー | |
人工呼吸管理患者数 | 396人 | 415人 | 379人 | 482人 | 432人 | |
人工呼吸管理日数 | 4(2-8)日 | 6.1日 | 4日 | 5.9日 | 5.8 日 | |
ICU在室日数 | 3(2-6)日 | 5.4日 | 3.8日 | 5.4日 | 4.3日 | |
予測死亡率 | 17.2% | 22.9% | 19.1% | 23.7% | 20.1% | |
実死亡率 | 3.6% | 3.5% | 1.7% | 2.7% | 1.2% |
主な診療科別患者延べ数
内科系 | 2022年 |
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循環器内科 | 216 |
呼吸器内科 | 309 |
総合診療内科 | 199 |
消化器・肝臓内科 | 104 |
腎臓内科 | 59 |
神経内科 | 132 |
血液内科 | 377 |
内分泌内科 | 63 |
アレルギー・リウマチ科 | 126 |
外科系 | 2022年 |
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消化器外科 | 989 |
呼吸器外科 | 166 |
脳神経外科 | 386 |
腎臓外科 | 100 |
移植外科 | 220 |
耳鼻咽喉科 | 133 |
泌尿器科 | 80 |